journal, columnmy essentials by Reiko Ogino

#03 愛しのフィンランド

10年前の秋、フィンランドに3週間ほど滞在しました。その頃はフリーランスでアシスタントをしていた頃で自分のいろいろなことに迷っていた時期だったと思います。

どうしてフィンランドに行こう、と決めたのか忘れてしまいましたが、映画『かもめ食堂』に影響されたように思います。映画の中に流れる時間軸や空気が本当に現実のものなのか、その頃の自分とはかけ離れたものが、本当に存在するのか見てみたい気持ちがありました。

いちばんの目的は「人の家の中が見たい」と思っていたので、ホテルやアパートではなくホームステイできる家を探しました。運良くアートスクールの講師をしている方とご縁があり、家の中にはキャンドル工房があって、ハンドメイドで作られたもので溢れた家で過ごすことができました。森の中にひっそりとあった赤い三角屋根の家そのものも自分たちで建てたものでした。


フィンランドでいちばんに感じたのは、ホームステイ先でも街の中でも心地良い人との距離感でした。日本にいるのと近いけれど、むしろ日本よりも心地が良いかもと思ったのは “何かできることがあったらいつでも言ってね、でも必要以上のことはしないよ” という姿勢を強く感じたからです。

お節介がなく、余計な干渉もしない、けど冷たいわけではなくてきちんとそこには温かさがある。それを強く感じてフィンランドという国が大好きになりました。

今回はそんなフィンランドにまつわるものを紹介したいと思います。当時の旅の途中や日本で購入したものです。
 

ARABIAのヘルヤ うさぎのオブジェ


当時、地図を広げて道端の人に聞きながら向かったARABIA社。看板を見つけた時は本当にあったと、とても嬉しかったことを覚えています。

すべすべとしてころんとした質感、雪のような静けさを感じるこのうさぎは、棚の上でもそこだけ静かな時間が流れていて、不思議なことに目に入ると気持ちがすんと落ち着きます。
 

Marimekkoのポーチ


マリメッコも雪の中、迷いながらやっと辿り着いた記憶があります。ファクトリーストアの真っ白な空間の中に色鮮やかな柄の商品が並んでいるのに、室内は無音でそのギャップに緊張した気がします。

師匠の道具バッグが赤い昔のマリメッコのトートバッグで、使い込んで色褪せているものがかっこいいなと思っていました。こちらは同じくオールドマリメッコの赤いポーチ。古着屋さんで見つけました。
 

ARABIAのマグカップ



こちらは当時、蚤の市で見つけたもの。木に雪の結晶が降りかかっているモチーフがとても好きで大事にしています。

ラップランドにオーロラを見に行ったのですが、当時、お金もなかったので普通なら車で行くところを1時間以上かけてひとり雪の山道を登りホテルに向かいました。街には車かバスでないと降りられないのですがそこを数日間、毎日徒歩で往復していました。

このマグカップの模様はその時の山道のようで、10年前の旅のいちばん象徴的なものです。人の気配もなく歩いているのは自分だけ、寒くて怖く感じられそうな山の中もこのマグカップに描かれているようなほわんと優しい木たちに見守られていたように思います。
 

LAPUAN KANKURITのブランケット


これは撮影でお世話になった際に一目惚れしました。色の組み合わせとモヘアのやわらかさがとても暖かく膝にかけると足の先までぽかぽかしてかかせないアイテムです。オーロラという意味の「REVONTULI」と名付けられている通り、色が重なって特別な雰囲気を放っています。
 

フィンランドのパン屋さんのポスター


はじめて聞いたフィンランド語は宇宙人みたいと思うほど、何を言っているのか見当がつかなすぎてホームステイ先では泣きましたが、文字にするととてもかわいい。昔はもっと発色の良いレモンイエローだったんだろうな、と思うぐらいのイエロー具合がとても好きです。
 

誰かの洋裁パターン



どこかの誰かの痕跡が残るものが好きです。スケッチだったり、メモだったり、刺繍やニットのサンプル帳だったり、どこかの誰かが大事に残してまさか他の誰かに所有されるなんて想像もしてなかったであろうもの。丁寧な作業の痕跡はその人となりが見えて愛おしくなります。

 

ムーミンに出てくる哲学的な言葉もフィンランド人の国民性を感じられてとても好きです。その旅の際に行ったムーミンの展示も、ラップランドにオーロラを見に行ったけれど見れなかったことも、全てがとても大切でしっかりと沁み込んでいます。

なんでもない道端も冷たい空気も空の色も森の姿も、全てが特別に見えたあの頃。今も同じように感じることができるのかなあ。10年歳を重ねた今、早くまたフィンランドに行きたいな、と心底願っています。

(つづく)

 


 

荻野玲子
東京都出身。2013年、岡尾美代子氏に師事後独立。ファッション、雑貨、インテリアなど暮らしまわりのスタイリングで活動中。猫2匹と手芸が日々の癒し。春に計画していることに向けて準備中。お知らせ出来るようにがんばります。

http://reikoogino.com/

 
my essentials by Reiko Ogino
#01 もの好きのはじまり
#02 花ホリック
#03 愛しのフィンランド
#04 作り手と持ち主の気配
#05 自分を整えるためのもの
#06 “あたたかさ” を感じるもの

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Text & Photo:Reiko Ogino
Edit:Yuki Akase

update: 2022.02.19

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