journal, columnmy essentials by Reiko Ogino

#06 “あたたかさ” を感じるもの

こちらの連載も今回で最後になります。

最後のテーマはなににしよう、なににしよう、毎日考えるけどなかなか浮かばない日々が続きました。世の中に起きている暗いニュースばかりが頭の中をいっぱいにしていて、思いつくことがどうも暗くなってしまう。仕事で会う人たちとも、なんだか元気が出ないよね、なんて言葉をよく口にした3月です。

想像を越えてくるような「まさか」が平気で起こる世の中を生きていて、世界で起きていることが自分の日常にも影響し、全てが繋がっていて他人事ではないことを痛感する日々です。

目で見る情報に気持ちが滅入ってしまうことが多いので、家の中で目に入るものや自分が身につけるものはできるだけ、気持ちを解きほどいてくれるような、あたたかい気持ちになれるようなものを増やしたいと思うようになりました。

わたしの持ち物は、“あってもなくても良いけど、あったらより良いもの” ばかりです。生活の中でどうしてもなくなったら困るものってほんのひと握りで、それ以外は正直、なくなっても困らないかもしれない。でも、それがあることによって生活が潤い、より楽しくなるものだと思っています。なんて自分の物欲を肯定しているのはさておき、今回はあたたかい気持ちになるものを紹介しようと思います。
 

千Senのペンダントライト


doinelで購入した真鍮のペンダントライト。とても品の良い真鍮の存在感に惹かれます。ぽっと控えめに灯るライトが円盤に反射して、よりあたたかみのある光を放ちます。天井を見上げると小さな月が光っているようで気に入っています。真鍮を削る際に細かに入った線も美しく、経年変化も楽しみです。

 

今井麗さんの作品


以前に渋谷のnidi galleryで展示されていた際に購入した作品。キッチンの天板に置かれたりんごが光を放っているかのようで、部屋の中でもそこだけ明るさを増します。電気を消しても、今井さんの作品だけは暗闇の中で輝いています。
 

C F M WATER COLORS絵の具セット



眺めるだけになってしまっている絵の具セット。絵の具が紙にくるまれた状態がかわいいので外したくないのですが、これを生かしたい気持ちはやまやまです。色のセレクトは購入店オリジナルのもので、初夏を感じさせるような配色が気持ちを明るくさせてくれます。

色は仕事をする上でもいちばんに気にかけていることで、写真に映る色のバランスや配置を常に考えています。
 

mochizuki 古代ビーズのネックレス


古代ビーズを使って作られたネックレス。1点ずつ異なるビーズが色も形も様々で、何千年も昔の人々がどんなふうにこのビーズたちを作ったのかな、と想像するだけでも気持ちが躍ります。着飾ることに使われていたのか、呪術的な意味があったのか、どこの国のものなのか調べてみると面白そうです。手書きで描かれたネックレスが入っていた布袋もとても素敵です。
 

J.Hannah のネイル


仕事で出会う人でも街中の人でも手元がきれいな人を見ると、きちんとケアされた美しさにハッとします。自分の酷使した労働者のような手と見比べて「あああ、ごめんねわたしの手」と謝ります。手はなにをするにも目に入るので、ネイルで色を加えた日は気持ちが明るくなります。J.Hannahのネイルはクリーミーな色味が気持ちを優しくしてくれます。
 

刺繍のクッション


ゴブラン織りに似た絵のような刺繍が好きです。海外に行った時に購入したことをきっかけにその刺繍を集めるようになりました。最近はヴィンテージのファブリックと組み合わせてクッションを作っています。ウールなのであたたかく、元々は椅子の座面などに使われていることが多かったようです。

小学生の時にクロスステッチやかぎ針編みに夢中になっていたことがあり、一針ずつこつこつと進めていく作業が頭を空っぽにできてとても好きです。
 

Fritz Kuhn『Aus Meiner Grasermappe』写真集





1953年に発行されたドイツの写真家Fritz Kuhnの写真集です。モノクロの植物の写真とイラストやカリグラフィーが見開きで描かれていて、どのページをめくっても美しく見惚れてしまいます。

自然の写真はモノクロでありながら、光のあたたかみを感じる写真ばかりです。手書きのイラストの線の濃淡やカリグラフィーのにじんだ質感、1冊を通して目に楽しい写真集です。自然への愛情が感じられてあたたかさを感じます。

 
最後に今、いちばんあたたかい気持ちにさせてくれるのは、この連載の写真を撮る際にいつも存分に邪魔をしてくれた2匹の猫たちです。2匹には精神的にとても助けられていて、支えてもらっています。

いつも視界に入る場所にいてくれて、この記事を書いている最中も常にデスクの上にいて見守ってくれています。こんなにあたたかい気持ちにさせてくれる2匹のためにも、出来ることをやり日々を心身共に健康でいたい。そんな気持ちです。


大事な椅子も気にする素振りも見せずに堂々と毛だらけにしてきます。

このコラムを読んでくださった方達からもたくさんのあたたかい言葉をいただき、たくさん励まされました。

これからも、もの好きの家にはたくさんの「もの」が増え続けると思います。“あってもなくても良いけど、あるとより良いもの” を大切に使っていきたいし、人にも提案したい。それがあることで自分のご機嫌をとれるような、そんな愛しの「もの」たちに囲まれていたいです。

(おわり)

 


 

荻野玲子
東京都出身。2013年、岡尾美代子氏に師事後独立。ファッション、雑貨、インテリアなど暮らしまわりのスタイリングで活動中。猫2匹と手芸が日々の癒し。春に計画していることに向けて準備中。お知らせ出来るようにがんばります。

http://reikoogino.com/

 
my essentials by Reiko Ogino
#01 もの好きのはじまり
#02 花ホリック
#03 愛しのフィンランド
#04 作り手と持ち主の気配
#05 自分を整えるためのもの
#06 “あたたかさ” を感じるもの

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Text & Photo:Reiko Ogino
Edit:Yuki Akase

update: 2022.04.01

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