手芸好きの母の影響か、人の手でつくられたものが好きです。元を辿ればどれも人間の手で作られたものなのですが、そこに誰かの手仕事の形跡が残っているものは、よりいっそう愛着が湧きます。
母が幼い頃に作ってくれた服はどこにあるか聞くと、たいがい誰かにあげてしまったそうで「なんでとっておいてくれなかったのだろう」といつも思います。
小学生の時はそれが特別なものだなんて思っていなかったけれど、今思うと自分だけのオーダーメイドでとっても特別なことだったのだな、とありがたみを感じます。母の手作りのものを身につけたり使っていた時間をとても大事に思うし、自分もそんなことが出来たら良いなあと。
今回は作り手や持ち主の気配が感じられる、愛しのものたちを紹介します。
刺繍が施されたランドリー袋
海外の洗濯物を入れていたであろう袋です。風になびいたような文字に刺繍してあるところや、袋にした部分の縫い方もざっくりしていてなおさら愛おしい。作り手の性格がでているようでかわいいなあ、と会ったこともない元持ち主のことを想います。
わたしも同じようにざっくりしているところがあるし、鉛筆の跡も残ったままで親近感が湧きます。大きな巾着袋は使い道がないので、ほどいてカーテンとして使っています。
誰かの古いアルバム
1940年代の誰かのアルバムです。ブリュッセルのジュドバル広場の蚤の市で、ガラクタの中から見つけたもの。仲が良さそうな家族の思い出と、手書きで書かれた文字も素敵です。
元持ち主は山が好きだったようで、山の写真が多いのもとても惹かれました。雑誌Oliveを彷彿とさせるようなファッションもかわいい。まさか別の誰かの持ち物になるなんて思わなかっただろうな。
熊のぬいぐるみ
イギリスのルイスに行った時に見つけた子です。鼻がすり減って青い糸で補修されているし、口も曲がって縫われています。手直しの形跡が元持ち主にすごく大事にされていたことを物語っていて「またこの子、こちらで大事にお預かりしますね」の気持ちです。
守田詠美さんのカレースプーン
カレースプーンと名付けられたこのスプーンは今まで食べたどのスプーンよりもカレーが食べやすく、より一層美味しく感じる魔法のスプーンです。口当たりがとっても良くてなんのストレスもありません。洋白という素材の品の良さも、形を作る際の叩いた跡も美しい。
張り子の招き猫
香川で買った招き猫の張り子。1点1点、手で絵付けされているので表情が違います。この子は福を招いてくれそうだし、玄関にいてくれたら元気が出そう、そんな気がして購入しました。
布で作られた野菜たち
こちらも香川の民藝品店で見つけた伝統工芸品。大根やネギにはきちんとひげが付いていたり葉っぱの部分はワイヤーが入っていたり、丁寧に作られたことが感じられます。縫い目も色付けも愛おしくなります。
こちらの作家さんはもうこの世にはいないようですが、こうやって後世に残るものを生み出せていることに尊敬の気持ちです。
井出八州さんのティッシュケース
杉の木で作られたティッシュケースは、上下がすっと磁石のように噛み合わさる感触も気持ちが良い。角も丸くなめらかな木の質感が優しくて、部屋に馴染みます。オーダーして届いたその日に、なんと猫が噛んで歯型がついてしまったのが本当に悲しいです……。
Laetitia Jacquetton のフラワーベース
自然界に存在する石の形を生かして、その石に合ったベースを吹きガラスで表現した作品。自然のものと人工的に作られたガラスの組み合わせはそれぞれ違う個性があってその融合に惹かれます。
自分も何か作ることが出来る人生だったらどんなに違っただろう、なんて想像をします。0から生み出せないので、既に存在するものを選んで組み合わせることをお仕事にしたのかなと分析しますが、まだ諦めていないような気もしています。
選ぶことはいちばん好きなことなのですが、それに加えて今年は生み出すこともしたい、その時間を増やすことは心身の健康に繋がるなあ、なんてぼやいていないでさっさとやったらいい、といつも自分のお尻を叩いたつもりになっています。0から生み出せる達人たちのことを、いつもいつも尊敬しています。
(つづく)
荻野玲子
東京都出身。2013年、岡尾美代子氏に師事後独立。ファッション、雑貨、インテリアなど暮らしまわりのスタイリングで活動中。猫2匹と手芸が日々の癒し。春に計画していることに向けて準備中。お知らせ出来るようにがんばります。
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my essentials by Reiko Ogino
#01 もの好きのはじまり
#02 花ホリック
#03 愛しのフィンランド
#04 作り手と持ち主の気配
#05 自分を整えるためのもの
#06 “あたたかさ” を感じるもの
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Text & Photo:Reiko Ogino
Edit:Yuki Akase