前回「我が家にあるものもは全部かわいい」という発言をしたかと思いますが、今回は私の思う「かわいい」をもう少し掘り下げてみたいなと思います。
「へなちょこ」なものが好きです。
かわいいというにはちょっと足りない、未完成さとか、逆に行き過ぎたかんじとか、そのアンバランスさに心惹かれます。
このまえ旅の写真を見返す機会があって改めて、私ってへなちょこなものが好きだな~と再確認。
アノニマスな、芸術にもならない、でもその人にはとても価値のあるもの。これを「フォークアート」と呼ぶと、この1冊に出会ったときに知りました。
イギリスの現代アーティスト、Jeremy Deller(ジェレミー・デラー)とAlan Kane(アラン・ケイン)によって収集されたフォークアートを一冊にまとめた本書には、私がこれまでいろんな国の街角を夢中で撮りあつめた取るに足らないちいさなものたちや、さらにとびきり馬鹿げているけれどチャーミングで魅力的なシーンやモノがたくさん収められています。
フォークアートはカメラに収めるだけでなく、購入できる場合は自宅に連れ帰ります。いちばんの自慢は、大江戸骨董市で出会った水兵さんのマスコット。
骨董市なので、どこか外国の人が昔につくったものが、海を渡ってやってきたのだろうと手に取りました。実際そういうフォークアートには骨董市で出会うことができます。
が、店主のおばさまが「それ、私がつくったのよ」と一言。まさかの展開にビックリ。
「私ね、水兵さんが好きなの」
マスコットの水兵さんは10人ほど居たでしょうか。よく見ると目と口はマジックでざっくり描かれていて滲んでいるものも。意外な展開とおばさまの水兵さん愛のおかげで、一気に愛着が湧きました。
ひとつ300円くらいだったかな……。私はふたり選んで連れて帰りました。
ちなみにこどもがいると工作やお絵描き、へなちょこでパワーに溢れた作品が日々大量生産されるのでへなちょこ天国です。私もずいぶん宝物が増えました。
私が死んでいつかこの水兵さんがまたどこかの骨董市に、今度は本当のブロカントとして並ぶ日を夢見ています。
今日のお買い物
手作りの水兵人形 / 大江戸骨董市
ブルーと白のフェルトと赤いぼんぼりで構成された水兵さんのマスコット。マジックで手書きされた顔に反して帽子は立体的で凝った造り(おばさまには水兵帽愛もあると推測)。
そのほか我が家のへなちょこさんをご紹介します。
貝細工の鳥 / Sous le nezのポップアップにて
ポルトガルのナザレという海岸の街に、ガラス張りのショーケース一面に貝と貝細工を並べたお店があります。
貝でヒトデでデコレーションされた台座にマリア像が添えられた置物がいくつもバージョン違いで並べられていて、その仕上がりのユルさがドストライクにツボでした。
残念ながら私が訪れたのは冬で滞在中にお店がオープンすることはありませんでしたが、Sous le nezの千春さんのおかげで数年越しに我が家にやってきたのでした。
ちなみにナザレのお店はこんなかんじ。
(アー、やっぱり再訪しなくっちゃとこの写真を見て気持ちを新たにしました)
機関車をモチーフにした紙の王冠 / ジャン=ポール・エヴァン
キリスト教の公現祭に食べられるガレット・デ・ロワ、12月の終わりから1月にかけて日本でも洋菓子店で売られるようになりましたが、この王冠をコレクションしています。
パイの中に陶器の欠片を入れて焼くお菓子でその陶器の欠片(フェーブ)をコレクションする人は多いですが、私はそれよりも紙の頼りなさや儚さに惹かれます。
2019年のジャン=ポール・エヴァンのものは機関車というモチーフが珍しく、またそれが幼さと大人っぽさの絶妙な塩梅にやられました。
モールのオブジェ / 息子作
息子のつくった工作でとくに気に入っているのが、このモールを繋ぎ合わせたメダル(のようなもの)狙いのない配色やバランスは大人にはなかなか真似できないもの。モール自体も存在がへなちょこで良いですよね。
(つづく)
よしいちひろ
1979年兵庫県生まれ、東京都在住。女性の憧れや日常を、やわらかくみずみずしいタッチで描く作風が人気を呼び、雑誌や書籍、広告などで幅広く活躍。リラックス感がありながら、エッジのきいたファッションやもの選びにも注目が。2020年女性4名から成るディレクションユニットwitchi tai toを結成。
https://chihiroyoshii.com/
my essentials by Chihiro Yoshii
#01 綿棒
#02 骨董市で出会った水兵さん
#03 Chloéのタートルニット
#04 pidätのバードフィーダー
#05 Volkswagen Polo
#06 メンテナンスをすること
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Text & Illustration & Photo:Chihiro Yoshii
Edit:Yuki Akase