journal, columnmy essentials by Chihiro Yoshii

#05 Volkswagen Polo


まだスマホが登場する前の話になりますが、「携帯電話を替える頻度が高いひとは、恋人もコロコロ変える」そんな心理テスト? 性格診断? を聞いたことがあります。

恋人はコロコロ変えませんが、携帯電話を替える頻度は結構高い人間だったと思います。

若かったこともあるし、自分が心から良いと思えるデザインのものが日本の市場になくて、最終的にsimを差し替えてNokiaの葉っぱ? カタツムリ? みたいな機種(Nokia 7600)を使ってみていたこともあります(最高にかっこよかったけど、日本のコンテンツが全然使えなかった)

(懐かしい!久々に引っ張り出してみました)

冒頭の性格診断は、要は飽き性だったり新しいもの好きだったりするのかどうか、という話なんだと思うんだけど、私はとても飽き性です。

インテリアやファッション、手に取るものや立ち寄るお店、今の年齢になるまで常に変化がありました。

飽き性で新しいもの好きであることは、現状には留まれないということだから、イラストレーターという仕事を営む上では良い作用もあるのかなあと、仲良く付き合ってきました。さらに40歳を過ぎると身体も思考も凝り固まっていくと聞くから、むしろここからはそのミーハーさに積極的に耳を傾けていこうと思っている次第です。

そんなわけで、世で「スタンダード」と呼ばれる名品たちをつまみ食いはしつつも、自分自身のスタンダードになることはなくって、例えば「このペン10本使い続けています」「このシャツかれこれ4枚目です」みたいなことはありません。

そんな私がついに出会ってしまった究極のスタンダード、それはVolkswagenの車です。(家族構成や周辺の道路事情など考え併せて我が家は「Polo」を選びました)

車も替える人は、どんどん替えていきますよね。我が家の場合はそんな予算はないので、現実的には難しいですが、Poloに出会ってから「こんどはあれに乗りたいな、これも乗ってみたいな」という気持ちがほとんどなくなりました。他のものだと、すぐに飽きてしまいそうな気さえします。

もちろんPoloも、1975年の初代からずいぶん変わりました。我が家のものは2017年式なのでかなり現代ぽい見た目です。でもそれさえも、時代に寄り添ったスタンダートだと感じて。

さらに内装(我が家のものは全くカスタムされていないベーシックな仕様)エアコンのアイコンとかメーターのフォントとか座面の素材とか、すべてが「デザインされていないかのような」シンプルさで、それがとても心地よいのです。


こんなに強烈に「他がなくて良い」と思ったのはいまのところこれだけなのですが、それでもスタンダートと呼ばれる品々にはそういった「飽きさせない」圧倒的なパワーや、時代を超えても古くならないタフさがあります。

「ずっとこれだけ」と思える私自身のスタンダードに出会える日はもう少し先になるかもしれませんが、これからもスタンダードに力を借りながらおしゃれを楽しみたいと、思います。

 

「ずっと愛せそう……?」
マイ・スタンダード候補

 

LACOSTE / L.12.12 ポロシャツ

ここ数年80年代、90年代を感じさせる素朴な装いに惹かれる私。その流れでポロシャツも欲しくなって、夏が来る前に渋谷の路面店で白い半袖ポロを片っ端から試着させてもらいました。購入したのがこちら「1933年に誕生し全てのポロシャツの<原型>である『L.12.12』」そのメンズFR4(M)サイズ。同じ白のポロシャツと言っても生地の厚みや、微妙なシルエット、ボタンの数、そしてサイズでこんなに印象が変わるのかと勉強になるとともに、洋服の醍醐味を味わった体験でした。

 

PETIT BATEAU / クルーネック半袖Tシャツ

白Tシャツは数あれど、この華奢さと厚みのバランスは他にないセンシュアルさがあると思います。PETIT BATEAUの白Tはこれで3枚めで、以前は袖口と襟元にピコレースのついた「ポワンココット」を愛用していました。そちらはもう少しガーリーな印象で着れます。

 

BIRKENSTOCK / ZURICH
映画「20センチュリー・ウーマン」で主役のアネット・ベニングが、リラックス感のあるデニムと合わせていたのが素敵で真似をしました。今期JIL SANDERでも別注モデルが登場したBIRKENSTOCK。何に合わせても簡単にこなれ感が出て、さらに履いていてラクチンなので気を抜くとこればかり履いてしまってすでにこの貫禄。ソール・コルクソールそれぞれ1回ずつ替えました。

 

(つづく)

 


 

よしいちひろ
1979年兵庫県生まれ、東京都在住。女性の憧れや日常を、やわらかくみずみずしいタッチで描く作風が人気を呼び、雑誌や書籍、広告などで幅広く活躍。リラックス感がありながら、エッジのきいたファッションやもの選びにも注目が。2020年女性4名から成るディレクションユニットwitchi tai toを結成。
https://chihiroyoshii.com/

 
my essentials by Chihiro Yoshii
#01 綿棒
#02 骨董市で出会った水兵さん
#03 Chloéのタートルニット
#04 pidätのバードフィーダー
#05 Volkswagen Polo
#06 メンテナンスをすること

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Text & Illustration & Photo:Chihiro Yoshii
Edit:Yuki Akase

update: 2021.09.30

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