journal, columnmy essentials by Akihiro Kumagaya

#02 おおらかな、器具

帰りのフライトまで、時間に余裕がある。長崎・佐賀の出張中、嬉野から雲仙までを海岸線から周り、空港に向かえばちょうどいい時間になりそう。

そして、どうやら雲仙には食材を持ち込み、温泉の湯気を使ってセルフで蒸せる「蒸気屋」という場所があるらしい。まったく想像がつかない、ローカルの醍醐味を味わいたい。


雲仙のオーガニック直売所「タネト」の生き生きとした野菜を買い込んで、意気揚々と僕らは、蒸気屋に向かう。道路から立ち昇る温泉の湯気を眺めながら。

「7時(19時)じゃない、17時だ!」

「この後、刈水庵で物を買うかもしれない」と、飛行機の預け入れ荷物の重量を確認したら、フライトの時間を都合よく間違えていた。早々に蒸気屋は諦め、初めて飛行機に野菜をのせて持ち帰った。しかし、これがとっても美味しい。温泉の湯気のかわりに蒸籠で蒸して。良いお土産になりました。

予定通りいかないことも、結果的に良かったことになる。旅路に多いことを、日々の生活に照らし合わせてみると、料理も予想外のことが起こる。作り途中に材料が足りなかった。気分が変わってきたなど。そんなときは、おおらかさを持っていたい。

あるいは、おおらかな物を持てば、機転を利かせ、いい方向に舵をきれるのではないか。そんな、心構えを手招く“物構え”をご紹介します。

 

POLO 5054 / Nuutajärvi


シリンダー形のグラスに見えて、柔らかいフォルムが手に馴染む。Kaj Franckが1969年にデザインしたタンブラーPOLO。

幅広の口径のため、水以外にもワインを注いだり、蒸留酒と氷、またはソーダ割りしてロックグラスと寛容な容器。なにより、手にフィットするのでお酒が進む。

POLOを観察すると、側面は垂直の途中から傾斜に絞られて、リムと底にかけてガラスが薄い。これにより、視覚的にふくよかに見えて、さらには口当たりが良い。フォルムとガラスの差厚は、微かなゆらぎとなり、テーブルに置いたときのすわりもよい。

Nuutajärvi、iittalaなど、Kaj Franckの良質なデザインは数あれど、POLOは主にアメリカ輸出用に作らえたマイナーな製品。ただ紛れもなく、日用の名品。北欧ヴィンテージを扱うELEPHANTに紹介されて、愛用しています。
 

Ildpot / FDB Møbler


ストーンウェアシリーズのボウルとプレート。

オーブン、直火のグリル、レンジ、冷凍庫、そして食洗機にも対応。多くの調理をカバーする、おおらかな優れもの。質感もいいので、そのまま器としてサーブしています。


Ildopotはとりあえず食材をグリルしながら、やっぱりグラタンの気分だったと移り変わっても、ホワイトソースとチーズを加えてオーブンに入れればいい。

また、手短にすませたい食事は、Ildopotを火にかけてソースをつくり、茹で上がったパスタと和えれば、そのまま食事に移れる。


フタのプレートは、パンや焼き菓子をオーブンに入れてリベイクにも。調理や洗い物に軽くて、耐久性もあり、仰々しくない。信頼できる道具。

Ildpotシリーズは、Grethe Meyerがデザインして、Royal Copenhagenが1976年から製造。ヴィンテージとなり高騰していましたが、FDB Møblerが2020年頃から復刻しました。
 

フランスの蒸発皿


ヴィンテージの実験用陶器の蒸発皿。溶液を蒸発させるための丸底へ、ソースやオイルが緩やかに集まる。片口の深いプレートとして、副菜や煮込みの盛り付けに最適。

このサイズか、浅深さがいいのか、日々の料理とマッチして、使う機会が多かった。
 

Nathalie Lautenbacher(Lahdenmäki)とKirstie van Noort

▲下:Nathalie Lautenbacher (Lahdenmäki) / 上:Kirstie van Noort

蒸発皿を使うので、一回り小さく深いプレートを使い始めました。最近では、こちらの方を活用している。

Nathalie LautenbacherのLINUMは、ケーキプレートと呼ばれるサイズ。ケーキはもちろん、パンや副菜、取り分け皿としても広く使いやすい。Kirstie van Noortのプレートも、ほぼ同サイズで同様に活用しています。スタッキングすると、親和性が分かります。

やや小ぶりなプレートに茹でた野菜をのせる。ギュウギュウに詰まった盛付けが、感じの良い中華料理店に出てきそうで気に入っている。
 

NM& Sand Bowl/cup


名前通りボウルとカップの曖昧さをもつ不思議なフォルム。サンドベージュの色合いが小気味よく、スープはもちろん、朝食にはヨーグルトを。ストーンウェアのため、オーブンにも使用できる。

ストックホルム国立博物館にリニューアル・オープンしたレストラン「NM&」のために、Carina Seth Anderssonがデザインしたテーブルウェアシリーズ。
 

Chez Panisse Line Side Bowl / HEATH CERAMICS


大きめのサイドボウルはたっぷりと安定したフォルム。メインの肉や魚を盛り付けることも多いが、ワンプレートでもゆったりと食事ができる。

カルフォルニアを代表するオーガニックレストラン Chez PanisseのAlice Waters、DosaのChristina KimとHEATH CERAMICSが協業したテーブルウェアのライン。スレートカラーとマットな質感は品が良い。

サンフランシスコのHEATH CERAMICSから持ち帰り、おおらかな使い心地の良さにPlaymountainで買い足しました。

器と道具を兼ねた言葉「器具」。調理器具という言葉が幅を効かせているのか、器具が使われている印象は薄い。専用器具より、おおらかな器具は、ユーザーが使い方を工夫できるのも魅力。

 

早々に諦めた、冒頭の蒸気屋。蒸気屋は湯宿に併設されており、温泉の湯気を利用した自然のセルフ蒸し、なんとも楽しそう。やり残したことがあれば、また行く理由になるはず……。

それに、蒸し野菜は、いつだって美味しい。

(つづく)

 


 

Photo: Takuroh Toyama

熊谷彰博
AK_DD 代表
2007年より、物の見方を探求し、独自の視点から文化的な媒介として、デザインとディレクションを手がける。さまざまな相談への着想と文脈の再構築から、デザイナー”など”のなど業が広がり続けている。

無印良品 池袋西武 企画展「STOCK展」企画・監修・会場構成、21_21 DESIGN SIGHT 企画展「雑貨展」コンセプトリサーチ、「柳本浩市展」キュレーター、オリンパス純正カメラバッグ「CBG-2」プロダクトデザイン。2021年、初の個展「OBJECTS」を開催。

編書に、『STOCK』(MUJI BOOKS、2017)がある。

http://alekole.jp/

 
my essentials by Akihiro Kumagaya
#01 物買ってくる  自分買ってくる

#02 おおらかな、器具
#03 素材と物、ブリコラージュ

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Text & Photo:Akihiro Kumagaya
Edit:Yuki Akase

update: 2022.04.29

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