journal, columnmy essentials by Taro Misako

#01 マイク・ミルズとミランダ・ジュライ

はじめまして。福岡でグラフィックデザイナーとして活動している三迫太郎と申します。doinelではWebサイトのデザインも担当しています。今回からよしいさんとバトンタッチして、しばらくコラムを書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

僕は最近まで自宅やシェアオフィスで仕事をしていたのですが、今年の4月、築49年のレトロビルの一室に新しくアトリエを構えました。独立13年目にして初めての、自分だけの空間です。

毎日過ごす場所だし、少しずつ手を入れて気持ちの良い空間にしたい。そんな気持ちから、まずは手持ちの2枚のポスターを部屋に飾ることにしました。
 

1. Mike Mills “Humans 02 Manifesto”


1枚目は玄関に。グラフィックデザイナーで、最近では映画監督として知られるマイク・ミルズの作品です。大分県日田市の映画館「リベルテ」さんで購入しました。


大きく書かれた人物のイラストは体がばらばらになっていますが、表情はとてもおだやか。笑みさえ浮かべているように見えます。


添えられている言葉は、マイクによるマニフェスト(宣言文)。これだけを読むと、いわゆる「諸行無常」に通じる考え方にも読めますが、本人のWebサイトにはこう書かれていました。

“僕は皆、少しくらい壊れる必要があると思うし、それが許される状況が必要だと思う。たまには躓いたっていいじゃないか。自分たちを完璧で抜かりのない仲のいい人々、問題なんて縁のない人、と思い描くより、人間は皆、どこかしら壊れていて、問題だってあって、それでもその状況を精一杯楽しもうとしているんだ、と考えることができないものだろうか。”

マイクはnikeのCMやX-girlのロゴデザインなど、数々の華やかな仕事を成功させてきましたが、その一方で商業的なクライアントワークへの違和感を募らせていました。そこから更に父親との死別という出来事を経て、自分自身を癒やすために生まれたのが、このポスターを含むプロジェクト「Humans」の一連の作品です。

この作品たちを初めて見たのは20代の頃でしたが、大人の、そして男性が「弱さ」や「やさしさ」を扱った作品を、こうしたポップな色使いや単純な線や形を使って作っていることに驚きました(正直に言うと、当時は「なんかいいな」と思っていたのを、今の年齢になって改めて理解した形なんですが)。

手に入れて以来、お守りのように飾っている作品です。
 

2. Miranda July “Dear Sophie”


もう一枚は打ち合わせスペースを兼ねたキッチンのドアに。こちらも最近では映画監督としても知られている、アーティストのミランダ・ジュライの作品です。

ミランダが架空の友人に向けたメッセージを書いた3枚セットのポスターのうちの1枚を、事務所引っ越しのタイミングで友人に分けてもらいました。部屋のインテリアは白とグレーをテーマにしているので、黄色を差し色にしたいな、と思って。


「親愛なるソフィへ」から始まる私信がポスターの大きさでどーんと壁に貼られているだけでも「どうしてこの言葉がここに……?」という違和感が面白いのですが、素朴な文字の筆致やポップな色づかい、下に残されたざっくりした余白などのバランスが魅力的で、飽きない魅力のある作品です。

でも書かれているのは「私のものはあなたのもの、彼氏以外は。」という謎のメッセージなんですよね……そんな堂々巡りが楽しいです。
 

2つの作品が教えてくれること

この2枚のポスターについては、マイクからは「自分の弱さを受け入れ、一緒に生きていくこと」、ミランダからは「自分たちの暮らしは、どうでもいいものたちが支えてくれていること」を、それぞれから受け取っているような気がします。

ミランダとマイクは2009年に結婚、2012年には子どもが産まれました。二人の作品を見ていると、お互いの作品がゆるやかに影響し合っているのを感じることができます。

二人のようにはできないかもしれないけど、僕も自分が関わる人たちみんなと少しずつ影響し合いながら、少しでもポジティブに暮らしていきたいと思います。

▲今回のために改めて二人のことを調べているうちに、うっかり買ってしまった本たち

ちなみに、二人の作品にまだ接したことのない方がいたら、マイク・ミルズの映画『人生はビギナーズ』と、ミランダ・ジュライの著書『あなたを選んでくれるもの』がおすすめです。ではまた!

(つづく)

 


 

三迫太郎
1980年福岡県北九州市生まれ。福岡を拠点に生活・アート・工芸に関わる分野でデザインワークを行うほか、zineレーベル「10zine」の運営、CINRA「HereNow Fukuoka」キュレーターなど、地域とデザインにまつわる様々な活動に携わっている。doinelのWebデザインも担当。
https://taromisako.com/

 
my essentials by Taro Misako
#01 マイク・ミルズとミランダ・ジュライ
#02 golden, golden, golden……
#03 光を身につける

≫ journal topページ
https://doinel.net/journal

 


 
Text & Photo:Taro Misako
Edit:Yuki Akase

update: 2021.10.29

mail magazine

Welcome to doinel online store !

doinel では、最新情報をお届けするメールマガジンを
不定期で配信しております。

ご登録希望のメールアドレスを入力のうえ
” Subscribe ” ボタンをクリックしてください。

doinel の最新情報をお届けしています。
ご登録を希望のメールアドレスを入力のうえ、
” Subscribe ” ボタンをクリックしてください。

Thank you for subscribing!

ご登録ありがとうございました。

doinel / ドワネル

mail magazine

doinel の最新情報をお届けしています。
ご登録を希望のメールアドレスを入力のうえ、
” Subscribe ” ボタンをクリックしてください。

doinel / ドワネル