journal, storyInterview with Mariko Hirasawa

(1) 「絵」を描くようになるまで


イラストレーターや版画家、またエッセイストとして、多岐に渡る分野で活動する平澤まりこさん。
広告や書籍、商品パッケージなどのイラストレーションを手掛けながら、近年ではモノタイプと言われる版画を中心に個人的な表現にも力を入れています。
さまざまな表現に向き合うしなやかな姿勢や、クリアな眼差しの背景にあるストーリーとは?
第1話は、現在の活動に至るまでの経緯を伺いました。

 


 

イラストレーターになるまでのこと

—小さい頃から絵を描くのがお好きだったのですか?

平澤さん: そうですね。小さい頃からお絵描きは好きで、描いては大人に褒めてもらって、気をよくしてプレゼントしたりしていました。
小学生くらいの時の夢は「絵本を書く人」だったこともありました。イラストレーターなどの業種を知らなかったので身近な「絵を描く仕事」が絵本作家だったのだと思います。ただその頃の想いが今の仕事と直接繋がっているかはわかりませんが、描くことは大好きでした。

—そうなんですね。どんな風に今の仕事に導かれていったのですか?

平澤さん: 大学を受験する時に美大への進学を希望していたのですが、両親に反対されまして。
「美大なんかに行ったら結婚や就職に困るぞ」と。私は疑問を抱きながらも、親がそこまでいうなら普通の大学に行こう、と一般的な大学に進みました。でもやっぱり全然しっくりこなくて。大学3年生の時にセツ・モードセミナーに入学し、ダブルスクールをすることにしました。絵を描くことにどっぷり専念できる環境というのはセツが初めてだったので、とにかくとても楽しくて。スポンジが水を含むようにどんどん吸収していきました。
そして卒業後は好きな雑誌の編集部などにイラストの売り込みに行くようになって。当時はまだ編集部の方が直接作品を見てくれたのです。それで「こんな絵を描いたら?」とか現場の声を聞きながら、初めは小さなカットの仕事をしていました。

 

デンマークへのひとり旅から、はじめての本の出版へ

平澤さん: そんな風に過ごしているうちに、だんだん「頼まれたものだけを描く仕事でいいのか?」と思うようになり、ある時デンマークへ1ヶ月ほどひとり旅に出たんですね。その旅では受け取るものがたくさんあって、「帰ったら日本で展示しよう!」という気持ちになりました。
帰国後、旅先で書いたスケッチをもとに絵を描いて、友人の営むカフェの壁に、絵と一緒に散文を添えて展示をしました。そうしたらそれをたまたま見た出版社の方が「本を出さないか」と声を掛けてくださって。
正直企画書の書き方もわからなかったのですが、その頃私は旅先で出会ったお店や物事をまとめたフリーペーパーを自作していました。編集部の方々の助けもあり、フリーペーパーの延長線のようなものを本にすることができました。4月をスタートに季節に合わせた近郊のおすすめを紹介した『おでかけ手帖』という本なのですが、それがすごく反響があって。当時ちょうど暮らし系の雑誌が増えてきたのもあり、いくつか連載を持つようになりました。

—弊社にも「おでかけ手帖」の愛読者がいて、上京したての不安な時に東京の素敵な場所をたくさん知ることができてとても癒されたと言っていました。
絵を描くことだけではなくて、発信することもお好きだったのですね。

平澤さん: そうですね。文章と、ポラロイドの写真と絵と、それらが三位一体になったものがその時の自分の表現でした。
連載の中で色々な作り手の方に取材に行くようなお仕事もしていたのですが、素晴らしいお話をたくさん聞きすぎて自分が飽和状態になってしまって、連載を終える頃には絵だけに集中することに心が向き始めました。

 

外界から内面へと向けられるようになったまなざし

平澤さん: 当時銅版画なども制作するようになっていたのですが、銅版画はイラストを描く時の気持ちとは違って、「絵画を描く」という向き合い方になります。
そうして少しずつ考え方が変わってきた時期に、腰椎を骨折して1ヶ月間くらい入院生活を経験したのも大きかったですね。
それまでは外側の世界や物質的なモノにも興味がいっぱいで、インプットしたものをすぐに人に伝えたい! という気持ちがありました。でも入院生活ではマグカップとノートとペンとPCと…たったそれだけで毎日過ごしていて、「モノがなくても人は生きられる」と気づいたのです。
外界に向けられていた興味が、内側の大切なものに向き始めて、もっと内面的に人と共感し合えるような作品を生み出したいという気持ちにスイッチしていきました。

私は動物の姿など具象的な絵を描いていますが、その奥に抽象的なものを込めています。直接説明はしていないんですが、でも観る人には伝わるのですよね。そういった実感に出会うことで、どこかで共鳴し合えるものづくりっていいなあと思うようになりました。内面的に響き合うことで人も自分自身も豊かな気持ちになれる、そんな作品を目指したいと思っています。

(つづく)

 
Interview with Mariko Hirasawa
(1) 絵を描くようになるまで
(2) 描くように刷る、1枚きりの「描版画」
(3) 「いつも自分を整えて、信じてあげる」

 


 

平澤 まりこ(ひらさわ まりこ)
主に東京を拠点に、イラストレーターや版画家、またエッセイストとして多岐に渡る分野で活動する平澤まりこさん。セツ・モードセミナー卒業後にイラストレーターとしての仕事をスタートし、2002年に初の著書『おでかけ手帖』を刊行。その後さまざまな連載やエッセイなどを刊行しています。
広告や書籍、商品パッケージなどのイラストレーションを手掛けながら、近年ではモノタイプと言われる版画を中心に個人的な表現にも力を入れている平澤さん。陶芸などの新しい素材や手法にも意欲的に取り組むなど、創造の幅を広げています。

https://www.instagram.com/mariko_h/

 
平澤まりこ 作品展
“小さきもの 大きなひとつとなりて”

会場:doinel (ドワネル)  東京都港区北青山 3-2-9
会期:2021年 12月 4日(土) – 12月 14日(火)
営業時間:12:00 – 19:00 水曜定休

◯会期の途中より、一部 online store でも展開予定です。

▼展示詳細はこちらから
https://doinel.net/21397
 

update: 2021.11.23

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