“objects” – アートやオブジェなどのように、生活必需品ではないけれどあるとなんとなくうれしいもの。
“objects” が身近にある暮らしやお仕事の様子を、ヘルシンキのアーティストやデザイナーの方々に伺いました。
1人めはヘルシンキのギャラリーショップ “Lokal” のインテリアも手がける空間デザイナーの Hanni Koroma さんです。
Profile / Hanni Koroma
空間デザイナー&家具デザイナー。美術大学卒業後、自身の空間デザイン事務所を構え、2017年に20周年を迎えた。数々の個人宅、オフィス、展示デザインなどの仕事の他に、アート作品も制作。2005年のフィレンツェビエンナーレでは「touched」という作品で受賞。2012年にオープンして以来、ヘルシンキのアートクラフトを紹介し続けている ギャラリー、Lokalのインテリアをデザインし、展示設計にも関わり続けている。また、Hanniの作品はLokalでも展示されている。
家はラボラトリー
Koti on tutkimuslaboratorio
空間デザイナーのハンニは約100年前に建てられた建築が多く残るクルーヌンハカ地区に暮らしています。パステル調の建物には独特の装飾が施され、町歩きをするにも楽しい地区。一人息子が数年前に一人暮らしをするようになり、今では夫とふたり暮らしをしています。
薄暗い廊下から室内に一歩踏み入れると、たちまち居心地の良い空気が流れていることに気がつきます。窓から光を多く取り入れ、自然素材がふんだんに使われ、調和という言葉がぴったりの空間が広がっていました。
木工を勉強したことがあるハンニは無垢材を好んで使っています。「うちの床は一切加工していない無垢材を使っているので、靴下を履かないと跡が残ってしまうの」と裸足の来客にはふかふかした靴下をそっと差し出します。無垢材は音を吸収するので、より柔らかい雰囲気になります。少しくらい不便でも、自分の好きな素材をこだわって選ぶ姿勢を保ち続けているのです。
空間デザイナーはアートと建築をつなぐ間の仕事であると、ハンニは考えています。「私の仕事のアプローチ方法は調査をすること。家をラボラトリー代わりに使い、素材や寸法、耐久性、フォルム、サンプルなど、色々な試みをします」。
調査のためのラボラトリーでもある家は、いつも何かの途中で、完成することがないのだそうです。「途中であることは、私にとって自然のこと。仕事やプロジェクトが終わると、私の手から離れて行き、私の生活から自然と消えていくのです」。
1997年、大学を卒業したばかりの若かりしハンニは自分の事務所を構えるという勇気ある選択をしました。2017年、事務所は20周年を迎え、その記念に初めてのシリアルナンバー付きの家具、Avataが誕生。 今までのハンニの経験、アイディア、美的センスが凝縮された大作で、自宅でも愛用しています。「日常生活に欠かせない家にあるものや食器を置きます。Carta Varese の SQUAREBOX も、美しいだけでなく、重ねて収納できるのでとても便利。ものは使い方によっては、隠れたり、あえて見せたり、取りやすく配置したり。それぞれの使い手がそれぞれのやり方で使い方を楽しむ棚なのです」。
仕事上、ハンニは20年にわたり、空間や保存についてリサーチしてきました。ハンニは収納は問題解決であり、人生の舵を握ることにもつながると考えます。「美しく隠すことだけでなく、必要なものが見つけやすいようにコントロールする。この棚が平和で調和のある日常をもたらしてくれることを願います」。
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photo: Chikako Harada
edit & writing: Eri Shimatsuka