journal, columnmy essentials by Maki Nakano #01 ガラスの魅力

はじめまして。スタイリストの中野真季と申します。インテリアやモノ(ジュエリーや化粧品、雑貨など)、暮らしにまつわる事を中心にスタイリングをしております。また展示会場のスタイリングを手掛けることもあります。

今回、「モノ」にまつわるコラムということで、自身の振り返りをしながら記憶とともにモノを巡っていこうと思います。

ところで、私は情報を得るときは視覚が優位に働くタイプです。目に入る情報が多すぎると少ししんどさを感じてしまいますが、程よいバランスを保ちながら好みのモノに囲まれる生活は私を潤してくれていると思います。

モノを手にした時、なぜそれに惹かれるのかを考えます。欲しいと思っていたものに出会った時、あるいは珍しいものに出会った時、心が動くほど印象深いプロダクトに出会った時、単純に好みのものだった時。

ガラスという素材も私が惹かれてしまうもののひとつです。そこで、一話目では過去に購入してきたガラスの紹介を通し、なぜ私がガラスに惹かれてしまうのかを考えてみたいと思います。

 

ブルーノムナーリのキャンドルスタンド

造形の中でも、“円柱“は無条件に惹かれる形です。自宅を見渡すと実に円柱のプロダクトが多いこと。こちらはプロダクトデザイナーでもあるブルーノ・ムナーリが1960年代にデザインしたキャンドルスタンドの復刻版です。

円柱のガラスシェード、キャンドルを吊るための金属、ロウの受け皿、更にすすよけのためにもう一段階円柱のガラスが差し込まれています。形状も構造も非常にシンプルで無駄がありません。その造形美に惹かれますし、機能的でありながら構造自体がデザインに落とし込まれている姿はさすがです。

機能美だ造形美だと言いながらも、ひとたびキャンドルに火を灯すと、ブルーのガラス越しから見えるゆらゆらとゆれる火に目が奪われます。無駄を省いたミニマルなデザインだからこそ鑑賞の邪魔をしないのかもしれません。ちなみに、火のゆらぎは1/fゆらぎと呼ばれる規則性と不規則性が適度に合わさったリズムで動き、これが癒し効果をもたらせると言われています。眺めていると無心になっている事に気付きますが心が落ち着く時間を作れている証拠でもあるので、忙しい時期こそわざわざ時間を作って一旦落ち着こうと心掛けています。

 

ヴィンテージのツヴィーゼルのグラス

神宮前にあるSAML.WALTZ(サムエルワルツ)に並んでいたグラス。

ラインの薄さ、尻すぼみの形、重なって並んだ姿、光を透過した時の美しさ、これは絶対欲しい、と見た瞬間に思いました。ちょうどスタイリングでも使えるグラスを探していたところで4つセットで手に入れました。しかしながら、デイリーには使っていません。愛でるアイテムとして、あるいは仕事のスタイリングにと活躍してくれています。

スタイリングでは水をなみなみ入れて並べてみたり、水滴を纏わせたり、ただ重ねたり、転がしたり、色んなことをこのグラスで試しました。

用途はその時々で変わりつつ、1番は食器棚に収まった姿を眺めているのが好きなのです。ですがせっかくのお気に入りなので、普段から使おうと思います。

 

八木麻子さんの作品

八木さんの作品はいわゆるガラスと聞いて思い浮かべるそれとは違い、柔らかさや優しさを感じるデザインが印象的です。ガラスのパーツを組み合わせて窯で焼きあげるキルンワークと呼ばれる製法で作品を作られており、ニュアンスのある色や、模様を作るために重ねる事で生まれたポコポコしたテクスチャーも魅力的でなんとも愛おしく感じるのです。

八木さんとの出会いは、数年前の彼女の個展に際し、販促物を一緒に作ったのが始まりです。その際のスタイリングも自由に取り組ませて頂きました。信じて委ねてくださることがありがたいですし、色んな実験的な事を撮影時にも試しながら進められた事がとても思い出深く残っています。

その後も何度か個展に伺わせて頂く機会があり、プライベートでの交流も続いていた中で、doinelでの展示会の会場構成をご依頼頂きました。彼女の製作方法から、テーマを“うつろい“と決めて展開したのですが、インスタレーションという形で見せる事で、今までとは違った見え方になったと喜んで頂けたのも嬉しいです。この個展の思い出にと購入させて頂き、それ以来すこしずつ集めています。

 

インゲヤード・ローマン(Ingegerd Råman)のジャグ

インゲヤード・ローマンは、スウェーデンを代表する陶芸家であり、ガラスデザイナーです。陶芸を学んだ後、ヨハンスフォース社、スクルフ社、オレフォス社でガラスデザイナーとして活動し、木村硝子やIKEAでも作品を発表しています。

このジャグを購入した時、そのお店でちょうど来日していた彼女をお見かけしました。インゲヤード・ローマン展の頃だったと思います。タイミングの重なりに驚きましたが偶然居合わせたことが嬉しく、こちらを見るとその記憶がセットになって思い出されます。

丸みのある造形に太さのある注ぎ口。凛とした佇まいが完璧なのです。水を注ぐとテーブルに映る影まで美しく、目で追ってしまいます。「使われて初めて自分のデザインの価値が生まれる」という姿勢でものづくりをしているそうなのですが、あくまでも日常生活の中で使うプロダクト、特別なものではないという彼女のデザインに対する考えは謙虚ながらシンプルで、使う人に寄り添っているなと感じます。

 

ヴィンテージのフラワーベース

ヴィンテージやアンティークを扱うショップgefuhl kleverig( ガフールクレヴェリグ )が、神宮前のフラワーショップVOICEで展示会を行っていた際に購入しました。

キューブ状のガラスの塊で強い印象なのに水を入れる容器部分の形が雫型になっているのが可愛らしく、そのバランス感が良いなと思っています。体積のずっしりしたモノに惹かれる傾向にあり、こちらはまさしくなデザインでした。自宅の玄関にある備え付けのシェルフに飾って愛でています。このままの方が好みなので、あまり花は生けていません。

なぜガラスが好きなのかを考えても纏まる気はしません。ですがやはり理由の一つはその透明感なのではないかと思います。

ではなぜ透明感のあるものが好きなのか、という点に移っていくと、得る情報が視覚優位であるというところに繋がってくるのではと思い至りました。知りたい欲が強く、普段色々なものを見て触れて学びたいと思っているからこそ、ふと頭をスッキリさせたい、クリーンにしたいという気持ちも芽生えます。今回ご紹介したようなガラスのアイテムは、私にとって仕入れたたくさんの情報を一度リセットしてくれる存在なのかもしれません。

 


 

中野 真季
大学卒業後インテリア会社にて8年勤務、ショップディスプレイ、コーディネート提案など幅広く活躍。2019年より、本格的にインテリアスタイリストとして独立。衣食住を中心としたライフスタイルについて、独自の感性を生かしたスタイリングを雑誌やWEB、広告など多数提案している。

Instagram : https://www.instagram.com/ikamtany/

my essentials by Maki Nakano
#01 ガラスの魅力

#02 なぜか惹かれる無彩色

 

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Text & Photo:Maki Nakano
Edit:Megumi Saito

update: 2023.04.14

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