はじめまして、フォトグラファーをしている本多康司と申します。二人の師匠の元で助手をしたあと2009年に独立。現在はインテリアや建築、ファッション、手仕事やモノ、風景などを撮影しています。
「モノ」にまつわるコラムのご依頼を頂き、正直なぜ自分にと驚いているのですが、自分が持っているモノについて考える貴重な機会になると思い僭越ながらご紹介させて頂きます。
改めて見てみると、自分が大切に使っているモノは人からの頂きものが多いと気がつきました。今回はそれらを紹介したいと思います。
エアロコンセプトの名刺ケース
こちらは師匠であるフォトグラファー・泊 昭雄(とまり あきお)さんから独立する際に頂いた名刺ケースです。「hinism(ヒニスム)」という泊さんがクリエイティブディレクションをしている本で初めて知り、私が大学時代を過ごした熊本の焼酎「しろ」の広告も撮影されていました。大学生の頃に日常的に見ていた瓶が、泊さんが撮影をするとしっとりとした空気感に包まれているように見えて惹き込まれました。その後、私にとって運命的なご縁もあり助手をさせて頂きました。
独立してもう13年ほど。この名刺ケースは沢山の出会いの側にいてくれます。航空機で使われているジュラルミンの素材が特徴で、名刺交換をする際に目に留めてもらえる事が多いです。おかげで色んな方との会話のきっかけになっています。
泊さんから独立した人はみんな持っていて、アシスタント仲間で繋がりを感じられるのも嬉しくなります。
オメガの腕時計

祖父の形見として頂いた腕時計です。形見だから大切に使うのは当たり前なのですが 、こちらを使うまでいわゆる高級な時計にそこまで興味がありませんでした。でも腕につけた時の引き締まる気持ちは何か違う気がします。撮影の日はほぼこの時計を身につけて行きます。
手巻き式なので時間を合わせるのが面倒な時もありますが、まるで儀式みたいにも感じられるから不思議です。秒針の細かな動きも時間を大事にしようと思わせてくれます。
実家のカレー皿

幼い頃から当たり前に実家で使っていた食器を、18歳で初めて一人暮らしをする際に貰いました。当たり前の存在として結婚しても引越しをしてもずっと持ちつづけています。そんな食器、皆さんにもありませんか。
歳をとると趣味趣向もはっきりしてきて、正直ちょっとダサいなと思いつつも捨てられないのは、色々な記憶が詰まっているからでしょうか。
母に「おかわり」ばかり叫んでいたカレーライス、初めての一人暮らしで好きになった人と一緒に作ったシチュー、アシスタント時代に忙しいのとお金がないのとでパックのご飯にかけたレトルトカレー、結婚して妻が作ってくれるちょっとお洒落なグリーンカレー。
自分が気に入って買った器やグラスは割ってしまう事があるのに、これは全然割れないのも不思議です。
本多康司
photographer
1979年愛知県生まれ、兵庫県育ち。熊本大学工学部卒業。長野博文氏、泊昭雄氏に師事後、2009年に独立。コマーシャルフォトグラファーとして広告、雑誌、書籍 を中心に活動。一方で主な作品制作として、『suomi』『集合写真』 『madori』『wander -めぐる-』『Trans-Siberian Railway』を 発表。
my essentials by Koji Honda
#01 受け継いでゆくモノ
#02 人の温もりを感じられるモノ
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Text & Photo:Koji Honda
Edit:Megumi Saito