Between Natural And Artificial

見覚えのあるような質感の見たことのない陶芸、自然物と人工物の間にある存在。陶作家 植田佳奈(うえだ かな)さんによるオブジェです。



土での質感表現の可能性を探る新しい陶芸を目指し、明確な用途を持たない感性的なものづくりに向き合っている植田さん。



長い時間をかけて波に削られてきた石や、動物の毛並みの流れ、蚕の繭の肌理など。自然物の生成過程や、質感・形態がどのように構成されているかをじっくりと観察し、得られた気づきを作品に落とし込んで制作しています。



「象嵌一輪挿し」は、気の遠くなるような工程を経て作られる、精緻な象嵌が施された作品。底面まで微細な線や点で覆い尽くされ、その細かさは目で追うのが困難なほど。作品ごとに紋様のピッチや形状は異なり、それぞれの質感が指先からも伝わります。



上部にあいた小さな穴には、ドライの植物や枝を生けることが可能。何も入れずに置いておくだけでも楽しめる、有機的で美しい佇まいです。



「積み石三連」は、自然にある石をそっと積んだような佇まいのオブジェ。メラミンスポンジをカットしたものに泥を染み込ませ焼成することで、スポンジが焼けてなくなり、スポンジの多孔質の質感を残した陶として焼き上がります。そうして仕上げたひとつひとつのパーツを窯の中で積み、まとわせた釉薬が3度目の焼成時に溶けることによってくっつき、完成します。



「たまご」や「石ころ」と同じく、釉薬をかけて焼いた後に裏面の目土の跡が付いた部分を研ぎ、作品全体をつるりとした滑らかな質感に仕上げた「特大皿」。タルク釉をベースに顔料や透明釉を混ぜ、即興的に色味や質感を作っています。


柔軟な感受性によって、自然物が持つ神秘的なありさまを、土という身近な素材によって追体験させてくれる植田さんの作品。インテリアの中にそっと置いておくだけで、日々のふとした瞬間に心地よさをもたらしてくれます。


▼象嵌作品の制作工程


▼多孔質作品の制作工程


▼つるりとした作品の制作工程

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