温かみのあるオークルの色合いと、ざらりとした表面のマットな質感。
陶磁器やプレーンな木製の食器にはない、独特の風合いを持つこの仕上がりは「蒔地」と言われる漆塗りの技法によるものです。
木地に直接漆を塗り、砥粉(とのこ/ 粘土を焼いて粉にしたもの、もしくは砥石を山から切り出す時に出る石の粉末)などを蒔いて付着させる方法で、凹凸のある質感に仕上がり、傷などが目立ちにくいという利点もあります。
手作業でつくられつつも、そのことを一瞬忘れさせるほどに均整のとれたフォルム。
シンプルであるからこそ立ち現れてくる曲線の美しさや、ものとしての存在感。
光の反射を細かく分散する蒔地ならではのマットな質感によって、
自然物のように穏やかな陰影を帯びています。
これらの美しい器は、神奈川県にて「森想木工舎」として活動する木工作家 田澤祐介さんによるもの。
農学部で森林について学び、森の調査員の仕事に就いている時に木工を志し、北欧家具の修理職人などの経験を経て、現在の作家活動に転向されました。
経歴からも窺える木という素材への理解や造詣の深さが、器から家具までの幅広い制作に影響しているよう。
独特のテクスチャーで存在感がありながら、無駄がなく端正。
取り合わせる器の和洋も選ばない田澤さんの作品は、そのまま飾って眺めたいような魅力と、様々な盛り付けに調和する使いやすさが同居しています。
持ち上げると木のプレートならではの意外な軽さがあり、指先にしっくりと馴染む柔らかな手触りも印象的。
暑さも和らぎ、食卓での時間がより豊かに感じられる季節。
美しい器でゆっくりと楽しみたいですね。
◯田澤祐介さんの作品は online store と外苑前店舗共にお取り扱いしています。
≫ staff blog TOPページ
https://doinel.net/journal/category/blog