昨年初夏、2度目のポルトガルを訪れた。ポルトガルの食事やお酒、雑貨…どんな出会いがあるのか、毎日わくわくしながらひたすら街を歩いた。お店をチェックしてはパトロールをするのが今回の旅の楽しみのひとつでもあった。
食事については、魚介も肉類も野菜もワインも、ヨーロッパであることを忘れるくらいどれも安くておいしいかった。イワシをグリルして、地元のオリーブオイルとヴィネーガーをたっぷりとかけ、塩をパラっと。それにポルトガルの爽やかなワイン、ヴィーニョヴェルデを…。ひとつひとつの食材がびっくりするほどおいしいので、こんなシンプルな食べ方が成立するのだ。初夏のやわらかな風を感じながらレストランの軒先で、ポルトガルで出会った友人たちと食べるそれは格別だった。素朴で飾り気はないけれど、ほっこり懐かしいようなポルトガル料理。
そもそも今回の旅の目的は、ポルトガルを代表する建築家、アルヴァロ・シザの建築を巡ることだった。建築家の夫に建築物のセレクトを任せ、結果、ポルトガルを東西南北3600kmを周る旅となった。シザについてはほぼ前情報を得ず、ポルトガルへと旅立ったが、シザの建築は建物そのものがすべてを物語っていた。モダニズムで圧倒的な存在であるが、ポルトガルのそれぞれの街や自然に溶け込んでいる。ポルトガルそのものだった。
ポルトガルに生まれ育ったシザの建築を見ているうちに、風土と建築と物、食事すべてにおいてその素朴でおおらかという同じような雰囲気を感じた。そして、ヨーロッパの西の果てのポルトガルは、日本の西の果て、今私が住む福岡と似ている。海に囲まれた西の果て、食材の宝庫、住む人々のおおらかさなど、ポルトガルと福岡の共通項はとても多い。数年前に東京から福岡に引っ越して居心地がよかったように、ポルトガルにも同じような心地よさを感じた。それ以来、すっかりポルトガルという国の虜になっている。まだまだ知りたいこと、発掘したいものはたくさんある。そんな縁を感じてポルトガルを福岡から紹介していきたいと思っている。
Written by:山上祐子(micelle ltd. バイヤー、OBG eu. オーナー)
東京のインテリアショップでバイヤーを経験後、福岡に移住。フリーのバイヤーとして様々なショップの立ち上げに携わる。2018年9月、ポルトガルの雑貨やワイン、日本の作家の器や食品などを扱うショップOBG eu.(@OBG_eu. )を始める。