Soil to Form
土の質感や釉薬の表情、焼成による痕跡。野生的な素材感を洗練された形で提示する、陶芸作家 野口悦士 (のぐちえつじ) さんによる作品です。
陶芸を志して種子島に渡り、アメリカ・デンマークなどでの滞在制作を経て、現在は鹿児島を拠点に活動している野口さん。唐津焼の作家 中里隆氏に師事しながら、独自に考案した築窯技術とともに海外の工房とも交流を図るなど、国内外で経験を重ねてきました。
既存の形式や習慣にとらわれない広い視点でつくられる器は、プリミティブで力強く、それでいて古さを感じさせないモダンな印象。地域や時代を超えた存在感をまといながら、生活に馴染む簡素な佇まいです。
料理を盛り付けた時、あるいは花を入れた時に完成する、と話す野口さんの器。土と釉薬というシンプルな素材に向き合いながら、様々な試みや作為を巧みに加え、独自の作品に焼き上げていることが伝わります。
土の質感や釉薬の表情、焼成が器に残す偶然の痕跡が、視覚だけでなく手触りからも感じられる器。特に緑青の作品は何度も窯入れを重ねることにより得ることができる、特別な色と質感です。
近年ではシャープなフォルムに、釉薬と焼成の組み合わせによって質感のバリエーションを持たせることを追求。絶え間ない好奇心と探究心によって、表現の可能性を更新し続けています。