東京を拠点に活動する金工作家 鎌田 奈穂(かまだ なほ)さん。
カトラリーや器といった日用品からシンプルなアクセサリーまで、細やかな視点で金属にやわらかな表情を添えながら、繊細かつ凛とした佇まいの作品を生み出しています。
鎌田さんの作品は、金属でありながら軽やかな存在感。そのものづくりのまなざしは、日常ではどのようなモノに向けられているのでしょうか?
また、これまでどのようなモノを見てこられたのでしょうか?
今回 doinel ではアクセサリーやカトラリーなど、日常に寄り添うシンプルなアイテムをセレクト。それに合わせて、鎌田さん自身の身の回りのモノなどについてお話を伺いました。
−−− まずは、ものづくりにおいてどのようなことを意識されていますか?
鎌田奈穂さん:使いやすさを念頭に、簡素なデザインと美しさ、時に面白みを意識し制作しています。
−−− 今回入荷したアイテムも、非常にシンプルですっきりとしていますが、よく見るとハンマーワークの跡などから、人の手のあたたかみや丁寧な視点が感じられます。それぞれどんなことを考えて作られたのですか?
鎌田奈穂さん:スプーンはヨーグルトやアイスクリームが最後まで綺麗に食べられるように。フォークはお皿にお菓子などど置いてある状態が美しく見えるように。
薄いお皿は和菓子を置いたときにお菓子の美しさの邪魔にならない位の立ち上がりで、アクセサリーは体の一部になる位のさりげないポイントになるようなものを。
貝を用いるのも、自然の素材は肌馴染みがよく、でもさらりとした美しさに惹かれるからです。
−−− 以前、一見別のジャンルに思えるジュエリーとテーブルウェアを特に分けて考えていない、「使う」ものとして同じ対象に捉えている、ということをおっしゃっていたのが印象的でした。
鎌田奈穂さん:制作をするときは、一番初めに何に使うかをイメージしながらサイズや仕様を決めていきます。そこからできるだけシンプルになる様に削ぎ落とし、ほんの少し私らしさを加えています。
−−− 鎌田さんの作品は普段使いできるものでありながら、共に日常に少し特別感を与えてくれるものであると感じます。同じような視点で共感できる、お気に入りのものはありますか?
鎌田奈穂さん:私は人の手跡が残るものを作っていますが、自分自身が日常で使うものにも、そういうものが多くあるように感じます。
椅子や器も、触れて使うことで心地よさを感じつつ、離れて眺めているだけでも幸せになれます。シンプルだけれど、人の手が感じられるものがなんだか好きです。
−−− 鎌田さんらしい感覚ですね。現在のものづくりにはどんな体験が影響を与えたと思いますか? 転換期のようなものはありましたか?
鎌田奈穂さん:転換期はもう20年も前の事になりますが、古道具坂田さんに足を踏み入れたことがこの仕事を始める大きな転機でした。
その頃はまだ二十歳位で、若くて何も知らない私にとって、遠い昔に道具として使われていたものを飾り眺めて楽しむことは新鮮で、大きな衝撃でした。そういったことを、とても美しいと感じました。
当時は絵を学んでいて、坂田さんの本に載っている白磁壺や古布のマチエールを絵に取り入れていましたが、物を絵にする事にとても違和感を感じ、それならば物を作る人になろうと思い、そこからは本当に流れるように師匠(長谷川竹次郎氏)の元へ流れ着き、気がつけば今に至ります。
制作スタイルの軸となるものはずっと変わりませんが、それは坂田さんと竹次郎さんに見せていただいた、多くの時間を纏ったたくさんの美しいもの達の記憶からできていると思います。
▲鎌田さんが愛用するトーネットのチェアに、e15のスツール。
眺めるだけでも満たされる、天然素材を用いたシンプルなデザイン。使い込むうちに愛着も増していきます。
▲ガラス作家 ピーター・アイビーによるガラスジャーはコーヒー豆のストックに。手吹きでつくられるゆらぎのあるガラスの質感が、日常の風景に温度を与えてくれます。
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鎌田 奈穂(かまだ なほ)
東京を拠点に活動する金工作家。絵画を学んだ後、2005年より金工師 長谷川竹次郎氏に師事。2008年より独立し、個人での制作をスタートしました。
カトラリーや器といった日用品からシンプルなアクセサリーまで、細やかな視点で金属に柔らかな表情を添えながら、繊細かつ凛とした佇まいの作品を生み出しています。
http://nahokamada.com/