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journal, story自然派ワインの生産者たち

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doinelではオープン以来、「最小単位のプロダクト」のひとつとしてフランスの自然派ワインをご紹介しています。

大量生産が当たり前となっている中、農薬や化学肥料を使用せずに有機農法で育てたブドウを使用し、可能な限り自然な形で生産された自然派ワイン。畑作りからびん詰めに至るまで、なるべく人工的なものを使わずにワイン造りを行うことは大変な労力とリスクが必要です。

権威や効率よりも、自分の納得のいくブドウ本来の味わいを優先したワイン造りを探求している、個性豊かな作り手たちをご紹介します。
そんな生産者たちの姿勢を少しでも知ることで、自然派ワインをより深く味わうことができそうです。

1979年生まれ、オーヴェルニュ地方出身のフランソワ・デュム。大きなワイナリーで働いた後、自然派ワインを作り始めた若手醸造家です。2006年から作り始めたワインは醸造量がとても少ないものでしたが、その真面目な味わいが生産者の間で評判を呼びました。一度飲むと忘れられないと言われる彼の作るまろやかなワインは、生産量の少なさから幻のワインとも呼ばれ、日本への輸出が可能になったのは2009年から。今でも週の半分は自然派ワイン生産者の先輩であるVincent Tricotの元で働きながら、無理なく自分のワイン作りを行っています。自身のウェブサイトやエチケットに、彼のチャーミングな人柄とポップなセンスが表れています。

 

フランス東部ジュラ地方の小さな村ピュピランで、父の代からのヴィニョロン(畑作りからブドウの栽培、ワイン作りまで一貫して手がけるワイン生産者)の家庭で育ったフィリップ・ボールナール。高校を卒業し、1 年の軍隊経験後すぐに3haの畑を手に入れ、1975年ワイン農協に就職。醸造責任者を担当、働きながら少しずつ自身の畑面積を増やしていき、1988年にブドウ農家一本に専念します。この頃からブドウを農協に売る一方、家庭消費用に少量のワインを作っていましたが、これが自然派ワインの巨匠ピエール・オヴェルノワの目に止まり、ドメーヌ立ち上げを勧められました。2005年、醸造学校でワインを学んでいた息子が戻るのを機に、50歳でドメーヌ立ち上げを決意。現在は畑の約半分のブドウで自らのワインを仕込み、残りの半分のブドウは引き続きワイン農協に売りながら生計を立てています。透明で優しいピュアな味わいが多くの人に愛されています。

 

アルザスの有機農法の先駆者と呼ばれながら、認証などには目を向けず、黙々とワインを作り続けるジェラール&ブルーノのシュレール親子。父・ジェラールは畑を担当。何十年にも渡り一度も除草剤、化学肥料を使っていない畑は健全そのもの。収量をできるだけ低く抑え、濃縮度の高いブドウを栽培しています。酸化防止剤の使用を可能な限り抑えて熟成させた、息子・ブルーノのワインは、独特の風味を備え、するどい酸が奥行きのある果実味をしっかりと支えています。ジェラール&ブルーノ親子が作るワインは、もっともヴァン・ナチュールのスタイルを表しているアルザスワインであり、何にも束縛されない自由な感性と自然なワイン作りだけが実現できた味わいといえるでしょう。ユニークで優れた感覚とシュレール家のあたたかい人間性を映し出したワインは、日本での人気も高く、アルザスのワインでは最も輸入量の多いワインですが、常に品薄状態が続いていると言われています。

 

現在「自然派」と呼ばれるワインの礎を築いた「自然派ワインの巨匠」マルセル・ラピエール。フランス各地で彼の影響を受けた生産者が活躍しています。3世代に渡りモルゴンでワイン造りに携わり、土地の個性を表現することに努めてきたラピエール家は、その歴史と経験に裏打ちされた手法でボジョレーのテロワールを描き出します。ヌーヴォーに代表される庶民的ワインであるボジョレーは、フレッシュさが特徴とされ、一般的に品質を語る物ではありませんでした。しかしラピエールのボジョレーはピュアな味わいで繊細かつ濃密、しかも熟成する事でより一層の魅力を増す、常識を遥かに越えるものであり、新しいボジョレーの世界を切り開きました。栽培においては土地の個性を生かすため、化学肥料や除草剤、殺虫剤などを用いません。健全で質の高いブドウを得るために1981年からビオロジックによる栽培を行い、収穫は完全な手作業。果皮などに付着する自然酵母の働きによって発酵させ、時間をかけて果汁がワインとなるのを見守ります。2010年に急逝したマルセルの跡を、妻マリーと、息子マチューが受け継いでいます。

 

北ローヌを代表する自然派ワイン生産者として知られるダール・エ・リボ。当主のルネ・ジャン・ダールと友人でありパートナーであるフランソワ・リボの二人によって運営されるドメーヌです。多くの自然派ワインファンを魅了する一方で、権威的なワインジャナーリズムを嫌い、メディアへの露出が極端に少ないために、知る人ぞ知る存在であるとも言えます。彼らはシラーという品種の繊細な美しさとエルミタージュやサンジョセフといった土地のテロワールを追求し、自然な栽培・醸造に辿り着きました。「自然派ワイン」それ自体が目的ではなく、「美味しいワイン」こそが彼らの理想なのです。栽培は、除草剤・化学肥料を用いない自然な方法で行い、極限まで遅らせた収穫によって健全で完熟したブドウを得ます。茎まで完全に熟したブドウであるため、除梗も行いません(彼らは良いワインのためには茎が必要と考えています)。発酵・醸造においても、自然酵母による発酵や、清澄・ろ過を行なわいなど人為的な作業を排し、ブドウの持つ本来の純粋さをワインに映しとります。彼らのワインは従来の頑強でスパイシーなシラーというイメージとは異なり、ブドウや畑本来の個性を引き出した非常に滑らかで優しい果実味のある、品の良さを備えたものです。素直に繊細に、ワインのピュアさや美しさを表現しています。

 

クロード・クルトワは、コトー・ド・ヴァロアで牛・豚・馬・鶏・羊などを育てながら、ビオディナミで素晴らしいワインを作っています。91年に自然火災の大火事で全てを失い、ほぼ無一文でロワール地方ソローニュにやってきた彼は、シレックス土壌のレ・カイユ(Les Cailloux)とレ・パラディ(Les Paradis)という2つの畑で同じ方法でワイン作りを始め、ファースト・ヴィンテージの1995年からパリのレストランや専門家の間で高い評価を得てきました。「環境の調和が完全にとれていれば、収穫の時期に雨が降っても果実が腐敗する心配もなく、素晴らしいワインを作ることができる。ビオディナミといっても、よその畑の草や堆肥を持ってきたら環境が壊れる。だから私は、醸造家であるよりも農夫であり続けたい」と語っています。奇跡のワインと呼ばれ、フランスで熱狂的な信奉者が増えています。極端なまでの低収量の彼らのワインはとてもオリジナルで究極な、深いエキスを閉じ込めたユニークなものです。

 

update: 2014.06.12