journal, columnmy essentials by Koji Honda #02 人の温もりを感じられるモノ

前回は頂いたモノをご紹介させて頂きました。今回は自分で買ったモノをご紹介出来ればと思います。

昔から古いものが好きでしたが、最近は作った方や選んだ方、メンテナンスしてくれる方が分かるモノが好みです。

フィアット パンダ

独立して5年目の2013年に買った車です。フォトグラファーの仕事は機材が沢山あるので車を持っている人も多く、自分もいつか欲しいと思っていました。
小さくてカクカクしたフォルムと「パンダ」という名前がずっと気になっていて、好みの青色でお手頃なものを見つけました。

初めてこの車で撮影に行った時はとても感動して嬉しくなりました。今まで沢山の機材を抱えて満員電車で揉まれて汗だくだった状況から、好きな音楽を聴きながらゆったりした気持ちで現場に向かえるなんて、家とは別の自分だけの空間を持った感覚です。

でも古い車のため細かい部分がよく壊れますし、クーラーは全然効きが弱いし、乗り心地は現代の車と比べると決して良いとは言えません。おまけに渋滞が多い東京での車移動は辛い時もありますが、それでも乗りたくなる不思議な魅力がパンダにはあります。ちょっと癖がある方がより好きになってしまうことってありますよね。


このパンダをデザインしたのはイタリアの有名な工業デザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロ。シートのファブリックも可愛くて、運転席にはラプアンカンクリのクッションを腰当てとして使っています。去年から群馬と東京の二拠点生活になったので、どんどん距離数も増えて18万キロを超えました。パンダさんにはまだまだ良き相棒として色々な場所へ連れてってもらいたいです。

ラプアンカンクリ:https://lapuankankurit.jp

岡美希さんのマグカップ

毎朝のコーヒーに使っているマグカップ。大分の国東半島へ撮影旅に行った際に出会った陶芸家の岡美希さんの作品です。

1日のはじまりにはもってこいの一品で、「コケコッコー」と今にも動きそうなニワトリが最高です。カップの底面には足まであります。


岡さんは実際に国東でニワトリを飼われていて、嬉しそうに抱っこしていた姿が印象的でした。ご本人もとても元気な方で、このマグカップから岡さんの笑顔や国東の美しい風景を思い出しています。

旦那さんの小野豊一さんはテキスタイルデザインと染色をされていて、小野さんの手拭いも愛用しています。撮影旅に行く時は風景を撮る事が多いので一人の時間も長くなり、そんな旅の途中でたまたま出会えた素敵な人はとても印象に残ります。

最初にお会いしたのは2015年、その後に1度再会し、今では年賀状のやり取りとSNSで近況を知る程度ではありますが、モノを通して遠くに住むふたりを感じられるなんて幸せだなと思っています。

すずめ草:https://suzumegusa.stores.jp

poubelle(プベル)で見つけた昔のまな板

西荻窪にあるアンティークショップ兼ギャラリーであるpoubelleで見つけた昔のまな板です。脚を付けてテーブルとして使っています。

元はまな板のため包丁で付けられた計算されていない細かい線が美しいです。テーブル上の照明もプベルで購入したもので、店主の矢澤さんが作ったモノ。矢澤さんのセンスはもちろんですが、人柄もとても魅力的なお店です。

二拠点生活では、撮影後の写真色調整・暗室現像などメインの仕事場は群馬で、東京の拠点にはあまりモノを置いていません。(狭いワンルームなのでそもそも置けないのですが)

その部屋にこのテーブルがあるのですが、ここでご飯を食べ、本を読み、お茶を飲んだり、たまにノートPCで仕事もしたりしています。


群馬の仕事部屋にあるテーブルには大きなiMacが鎮座していて、ちょっと書きものをする際にも大きなPC画面の前でペンを走らせている事があります。

仕事上大きなPCは必要ですが、いつもスクリーンの前にいるのは嫌になりますし、なにも置かない何でも出来るテーブルがある空間はいいなと思っています。

白い壁の前にあるシンプルなテーブル姿が何故か新鮮に感じて、テーブルってこうだよなと思えるのです。でも思い起こせば夜にお酒飲みながらスマホいじっている時間も多いのですが……。

poubelle:https://www.instagram.com/poubelle0702/


ハッセルブラッド

写真を本格的に始めた2006年に美しさに惚れて購入して以来、ずっとメインで使っているスウェーデン製のカメラです。少し大きめの中判フィルムで、上から覗いて絵作りする正方形の世界は独特の雰囲気を持っていると思います。

一般的には大きいカメラに見えますが、中判カメラでは小ぶりなサイズで両手で包むように写真が撮れる事も気に入っています。細かい部分もとても丁寧に作られていて、言葉で伝えにくいのですが操作感や触り心地が本当に素晴らしいです。シャッター音もいいんですよ。
そのような気持ちは写真に何かしら影響を与えてくれると思っています。


フィルムでのお仕事は少しずつ減ってきていますがチャンスがあれば出来る限りフィルム撮影もしています。デジタルでもこの感覚を大切にしたいので、このハッセルブラッドのフィルム部分をデジタル化できる機材も使用しています。今は作られていない60年ほど前のカメラをデジタルカメラに出来るのは凄いですよね。

最近は新しいデジタルカメラや携帯カメラが次々と出てきます。もちろんテクノロジーが進化するのは必要なのでしょうが、短いスパンで消費されていくのは正直寂しいです。写真そのものについても、日常に膨大にあふれていて、一瞬しか見られない写真が多くある事も気になっています。写真の役割が多様化されて、即物的な利点もあるのですが。

写真が楽しい事は変わらないので、このハッセルブラッドをメンテナンスしながら大事に使い続けて、いい写真を撮っていきたいです。

モノについて2回にわたってご紹介させて頂きました。改めて頂いた人、作った人、買ったお店の人を思い出せるモノも好きなんだなと思いました。

人のぬくもりを感じられるモノはどこか優しい気持ちになれるのでいいですよね。

この度は素敵な機会を頂きありがとうございました。読んで下さった方に感謝申し上げます。

 


 

本多康司
photographer

1979年愛知県生まれ、兵庫県育ち。熊本大学工学部卒業。長野博文氏、泊昭雄氏に師事後、2009年に独立。コマーシャルフォトグラファーとして広告、雑誌、書籍 を中心に活動。一方で主な作品制作として、『suomi』『集合写真』 『madori』『wander -めぐる-』『Trans-Siberian Railway』を 発表。

HP:https://honda-koji.com/

my essentials by Koji Honda
#01 受け継いでゆくモノ
#02 人の温もりを感じられるモノ

≫ journal topページ
https://doinel.net/journal



Text & Photo:Koji Honda
Edit:Megumi Saito

update: 2023.03.04

mail magazine

Welcome to doinel online store !

doinel では、最新情報をお届けするメールマガジンを
不定期で配信しております。

ご登録希望のメールアドレスを入力のうえ
” Subscribe ” ボタンをクリックしてください。

doinel の最新情報をお届けしています。
ご登録を希望のメールアドレスを入力のうえ、
” Subscribe ” ボタンをクリックしてください。

Thank you for subscribing!

ご登録ありがとうございました。

Subscribe
doinel / ドワネル

mail magazine

doinel の最新情報をお届けしています。
ご登録を希望のメールアドレスを入力のうえ、
” Subscribe ” ボタンをクリックしてください。

doinel / ドワネル