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Alexander Lauber interview

2017.01.31

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Alexander Lauber

2009年にウィーンで生まれたユニセックス フレグランスブランド、WienerBlut(ウィーナーブルート)。
19世紀末のウィーンの街と文化に触発された、創業者でクリエイティヴディレクターのアレクサンダー・ローバーが生み出すフレグランスの背景には、グスタフ・クリムトやエゴン・シーレ、オットー・ワーグナーらが活躍した、当時のウィーンの快楽主義があります。
ブランドネームの「WienerBlut」は、ヨハン・シュトラウス2世が1873年に作曲した有名なワルツ「ウィーン気質」に由来。設立当初はかつてウィーンに実在した香水のレシピをたどりながら香りを構築していったというローバーですが、現在は当時のウィーンの精神を活かしながら、より新しい表現を求めています。
ローバーはなぜ香水を作るようになったのか、またなぜ19世紀のウィーンに惹かれるのか。ウィーンを拠点にしつつ、世界を視野に活動を展開する彼にメールインタビューを試みました。

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―子供の頃、ボローニャやパリやケープコッドなど世界各地に住んでいて、そこでさまざまな香りとの出会いをしたと聞いています。それがあなたの嗅覚を鋭いものにしたと思いますか?
幸運なことに、私はさまざまな異なる環境に身を置いてきました。ケープコッドの家は海水と松葉の香りで満たされていましたし、ボローニャに住んでいた時には熟れた野菜や果物やチーズの香りが混在する市場が近所にありました。私は子供の頃、香りが特定の瞬間や場所の記憶を揺り戻すことに気づき、それらの香りをガラス瓶やビニール袋の中に閉じ込めておこうとしたものです。当時は意識していませんでしたが、あれが私の情熱の端緒だったのだと思います。

―最初に自分で買った香水のことを覚えていますか?
最初に香水を買ったのは15歳の時。本物の麝香*の香りを閉じ込めた、小さな香水瓶を買いました。
*麝香(じゃこう):雄のジャコウジカまたはジャコウネコから取る香料。古くから珍重される香水の原料。

―香水業界に入る前は何をしていたのか教えてください。
広告業界でクリエイティヴディレクターとして働いていました。しかし、広告や宣伝のように短命のものをクリエイトするプロセスには不満がありました。

―19世紀のウィーンに興味を持つようになった理由は?
19世紀のウィーンの何が面白いのかと言えば、オーストリア=ハンガリー帝国内のさまざまな文化に影響を受けていたことです。忘れられて久しいことですが、当時のウィーンでは音楽や絵画だけでなく、職人仕事の技術だとか日々の生活文化の中にも素晴らしいものがありました。例えばウィーンは欧州最大の絹の産地でもあったのです。

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―あなたが19世紀のウィーンと聞いて思い浮かべるものや、インスピレーションの源などがあれば教えてください。
ウィーンは間違いなく、他のドイツ語圏の街と比べて独特の、馬鹿げたライフスタイルを体現していました。例えばワルツは他の国では恥ずべきものだとみなされていましたし、ベルリンでは20世紀初頭まで禁止されていたほど。しかし、それと同時に他に類を見ない知的な論文なども発表されたのもウィーンでした。当時のジークムント・フロイトの思想は、私たちのいくつかのプロジェクトに大いに影響を与えています。

―当時のウィーンにあった快楽主義や陽気さは、現代のウィーンにも生きていると思いますか?
間違いなく生きています! オーパンバル*に代表される舞踏会シーズンのウィーンの文化にある祝祭性を見ればわかるでしょう? 私たちは楽しむことに対して非常に真剣なのです。
*オーパンバル:ウィーン国立歌劇場で毎年2月に行われる舞踏会。ヨーロッパで最も格式高いダンス・パーティの一つに数えられる。

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―香水作りにあたっては、高価な天然材料をふんだんに使っているとのこと。原料についてのこだわりを教えてください。
私たちは生の原料を豊富に使いたいと思っています。なぜならそれらが華やかさや複雑さをもたらすからです。これは非常に高品質の精油を意味しています。例を上げましょう。殆どの場合、香水メーカーはアンバー*を使いますが、彼らには本物のアンバーグリス**を使う余裕がないのです。アンバーグリスは非常に高価なのです。しかしそこにははっきりとした違いがあります。サンダルウッドも同様です。
*アンバー:アンバーグリスの代用品。成分を化学的に再現した合成香料
**アンバーグリス:龍涎香(りゅうぜんこう)。マッコウクジラの腸内にできる結石

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―ボトルやパッケージのデザインをBuero New Yorkに依頼した理由を教えてください。デザイナーのアレックス・ウィーデリンはあなたと同じオーストリア人ですね。
私は常にその分野でベストの人間と仕事をしたいと思っていますが、アレックスはファッション業界では最高のアートディレクターです。そしてまた彼はウィーンで働いていたというバックグラウンドを持っており、私たちのブランドとその物語性を理解してくれていたからです。デザインにあたって、アレックスと私は19世紀の香水瓶の形やスタイルを研究することに時間を割きました。私たちは共にアンティークの香水瓶の私的コレクションを持っているのです。

―ボトル、パッケージを通じて表現したかったブランドのフィロソフィーとは?
ボトルに女性的な側面と男性的な側面の両方を持たせ、品質の高さやクラフツマンシップを感じ、見てとれるようなものにしたいと思っていました。これらのボトルは手仕上げされているため、それぞれの形が少しずつ異なっていますが、私たちはこれが魅力のひとつになっていると思います。実は、男性と女性の香りを分けるのは現代のメインストリームの香水業界が生み出したことであって、お客様の多くはカテゴライズすることを嫌います。

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―WienerBlutの香水はどのような人々に受け入れられているのでしょうか。
私たちのお客様は情熱を持って作られた魅力的な物やプロダクトを楽しんでいらっしゃる方々。彼らは珍しくてレアな香りとその背景にある物語の真価を認める人々なのです。

―ちなみに、普段香水をつけていますか?
通常は現在進行形のプロジェクトで香りを調節するために、その香りを身に着けています。同時に私はニュートラルな状態で身の周りのさまざまな香りをピックアップしたいとも思っています。

―香水作りにあなたを駆り立てるものとは何ですか?
香水作りは私にとって、自分の思想やアイディアを表現し、人々と分かち合うための方法なのです。

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<Alexander Lauber(アレクサンダー・ローバー)>
米マサチューセッツ州のケープコッドに生まれ、イタリアのボローニャやオーストリアのザルツブルクなどを転々としながら育つ。広告業界でクリエイティヴディレクターとして働いた後、香水の道へ。2009年に立ち上げた「WienerBlut」は現在、ロンドンのリバティやトランク、ウィーンのロブマイヤー本店、ミラノのモノクルなど、厳選されたショップでのみ販売されている。

WienerBlut ブランドページ
http://doinel.net/brand/wienerblut

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